“The Bottom Line”
background by day, backbone of the swing by night.
北澤一也(Kitazawa Kazuya)
Bass Player
1981年東京都出身。
もともとはパーカッショニストとして活動を始めたが、バンド内のベーシストの“逃走”をきっかけに、急遽ベースへ転向。
指の形状による制限があり、いわゆる「正統な奏法」が選べなかったため、独学で自身に合ったアプローチを探り続けた。その結果、決して“無理のない奏法”とは言えないものの、自分の身体で扱える自然なスタイルを手探りで確立し、現場での経験を通じて実践的なグルーヴを身につけていった。
20歳のとき、右手の故障により演奏から一度離れることに。
治療とリハビリに長い時間をかけたが、音楽への気持ちは次第に遠のいていき、気づけば約6年の月日が過ぎていた。
そんな折、日本のジャズ黎明期を支えてきたある著名なクラリネット奏者と出会う。『今は弾けない』と伝えると、
「いいから弾け」
と静かに一言。
しぶしぶ楽器を手に取ったものの、一曲も最後まで弾ききれなかった。
ところが返ってきたのは、「なんだ、できるじゃないか」という言葉だった。
できる・できないではなく、まず向き合うこと——。
その一言が、再び音楽へ戻るきっかけとなった。
以後、都内を中心に演奏活動を再開。堅実で安定感のあるプレイスタイルを持ち、「しっかりとした鳴り」「自然に馴染む音」と評されることが多い。
ニューオリンズやディキシーといったトラディショナルジャズから、スウィング、モダンジャズ、フュージョンまで——幅広いスタイルに対応し、ビッグバンドから小編成のコンボまで多様な編成でも、常に“音楽全体を活かす”姿勢を大切にしている。
ウォーキングラインでは芯のあるうねりを意識し、アンサンブルを下支えする重心のある音づくりを心がけている。いわゆる“ソロで目立つ”タイプではなく、「その場に自然と馴染み、音楽に溶け込むベース」を理想としており、派手さよりも音の役割を丁寧に果たすことを重視している。
その姿勢は、往年のジャズベーシストたちへの敬意と、「音楽を底から支える存在」への共感に根ざしている。
また、ライブでは堅実なベースワークに加えて、MCへの評価が高い。
技術だけでなく、“その場の空気を整え、会場全体を温めること”も自分にとっての大切なエンターテイメントであり、音楽の一部だと考えており、演奏の合間に交わす言葉も含めて、「目の前にいる人を楽しませること」こそライブの本質だと思っているからだ。
時に「MCだけでも十分」と言われることさえあるが、それもまた、音だけでなく“場そのもの”を支える役割を自然体で果たしてきた証だと感じている。
現在も本業を持ちながら活動を続ける“兼業ミュージシャン”。
プロを目指してきたわけではないが、少しずつ演奏の場が増え、周囲の信頼に支えられながら、等身大のスタイルで音楽と自然に付き合ってきた。
華やかさとは無縁だが、「一音一音に説得力を持ち、音楽全体を静かに支える」—そんな思いを胸に、今日も静かに音楽に寄り添い続けている。
My Instruments
コントラバス: Gliga 4/4
“Steady and sincere —
a tribute to freedom.”

